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2019.08.21 カラクリストな人々

医師→東大データサイエンティスト→カラクリ。ある数オリメダリストの軌跡。

【profile】吉田 雄紀
 灘高等学校に在籍時から数学に興味があり、国際数学オリンピックや国際情報オリンピックに出場し、両大会で銀メダルを獲得。東京大学理科三類に進学し、医師免許を取得。医学部生時代・研修医時代に脳科学の可能性に興味をもち、2016年東京大学大学院 新領域創成科学研究科へ。修士課程を飛び級で卒業し博士課程に進む中で、人間の脳を分析するには、人工ニューラルネットワークへの理解が必要だと強く感じデータサイエンティストの道を選ぶ。世界初の量子コンピューティング大会で優勝するなど気鋭の成果を出す中で、カラクリCTOと出会い、起業に興味を持ち始める。2019年1月にカラクリにJoinし、テックリードの役割を担う。

邦訳著書として『マレー数理生物学入門』『マレー数理生物学 応用編』(発行元:丸善出版)、プライベートでは「スーパーマリオメーカー“上で動く計算機”」をニコニコ動画で発表し、合計80万再生の記録をもつ。

 

 

こんにちは!Corporate and People Groupのホリノウチです。

本日は、R&Dのテックリードを務める吉田雄紀のインタビューをお届けします。吉田はカラクリのデータサイエンティストでありながら、現役医師であり、東大大学院の研究者でもあるという経歴の持ち主です。「研究者」「医師」という道を突き進むこともできた吉田が、「なぜカラクリにJoinしたのか」をAIの今後の展望と共にインタビューしました。吉田のAIにかける想い、カラクリで実現したいことが詰まった内容となっているので、ぜひご覧ください。

 

「数学」「コンピューター」好きの延長線上にあった脳科学

ー 吉田さんはデータサイエンティストであり、現役医師でもある。カラクリストの中でも異色の経歴をお持ちですよね。まずは、なぜそのような道を歩んできたのか教えてください。

 私は根っからの「数学」「コンピューター」好きで、その延長線上に今の経歴があると思っています。高校生の頃から数学やプログラミングの大会にはよく参加していて、東大理Ⅲに入学後も数学が一番好きでした。専攻を決めるとき、数学者になるか医師になるか迷いはあったのですが、親の勧めもあり医学の道へ。ただ、やはり医学の中でも数学/コンピューターに携われるものを研究したくて、「数理生物学」というジャンルにたどり着きました。「数理生物学」は、生物学のいろんな現象を数学的に解析するもので、たとえば脳の中の腫瘍がどうひろがっていくのかを微分方程式で算出していくような学問です。

 

ー 医療から人工知能の研究というのは、かけ離れているようにも感じるのですが、何かきっかけはあったのでしょうか?

 きっかけというよりは、「数理生物学」の方法で脳を研究していくうちに自然と人工知能に興味を持ち始めたというほうが正確かもしれません。数理生物学の中でも神経科学(脳科学)にのめり込んでいき、「なんで脳みそは様々な情報を処理できるのか、そのメカニズムを知りたい」という欲求が芽生えてきました。神経を知るには数学的な知見が必要なんです。神経が何をやるのか、モデル化、単純化してあげないといけませんから。

 そこで研修医期間を経て、東京大学大学院 新領域創成科学研究科への進学を決めました。現在お世話になっている研究室の教授が、機械学習をやりつつ、理論神経科学の研究をおこなっていた方だったので、ピッタリだったんですよ。

 

基礎研究気質だった吉田を変えた、CTO中山との出会い

ー 現在は、人工知能の研究のほうをメインで行われていると思うのですが、そこまで行きついた背景はどんなところにあったのでしょうか?

 いまは完全に人工知能の研究にハマっていますね。もう少し学術的にいうと人工ニューラルネットワークの研究です。というのも本分野に携わるようになってから、自然脳は複雑すぎて、まだ人類が理解するのは早いのではないかと考えるようになりました。人間の知能を単純化したものが「人工知能」であり、人類はその解明すらできていないわけですから。だから、まずは人工ニューラルネットワークを理解しようと思い、データサイエンティストの道を歩むことになりました。

 

ー なるほど、その東大大学院でCTOの中山と出会ったとお聞きしています。2人はどのような関係だったのですか?

そうですね。中山…普段通りトムと呼んでいいですか?(笑)

トムとは研究室の同期として出会いました。トムは学生でありながら、すでにエンジニアとしてのビジネス経験も積んでいました。起業することを勧められ、学生だけのスタートアップALをトムと一緒に創業しました。ALはゲーム開発や人工知能・ビッグデータ分析などを中心に展開しているのですが、そこでアイデアを出し合ったり、ビジネスコンテストへ一緒に出たりしているうちに「シンプルにすごいヤツだな」って。そこから、もっと一緒に色々なことがしたいという想いが芽生えて、カラクリのメンバーとして参加させてもらいました。

カラクリのビジネスサイドには、コンサルタントや上場企業の元役員の方などが在籍していて、やはり研究室にいるとわからないことにも触れられるのが、大きな刺激となりました。

 

ー 実際にご入社されて、ギャップはありましたか?研究室との両立は大変なのかなと感じる部分もあるのですが、いかがでしょうか

 会社に対するギャップというより、カラクリの仕事を通して「新しい自分」に出会えたのが、驚きでした。私はずっと基礎研究気質だと思っていたのですが、「顧客の課題解決」を非常に重要視するタイプであることがわかりました。お客様にとって「自分の技術がどう役立っているのか」が見えるのは、本当にやりがいがあります。

 私は欲張りなのかもしれませんが、基礎研究とビジネス両方をできることが合っているようです。だから両立を大変だと思ったことはありません。「基礎研究で知見をためる」時間と、その研究した内容を駆使しながら「顧客課題を解決する」こと、この2つが合わさることで、これまで以上に充実した日々を送らせてもらっています。

 また、この2つを両立できる会社というのは意外に少ないんです。大企業であれば、もちろん両機関揃っていますが、「研究」か「プロダクト開発」どちらかを選ばないといけないんじゃないかな。そういった意味でも、カラクリという環境は自分に合っていると思います。

 

「スマホひとつで説明できるAI」がチャットボットの面白さ

ー いまの仕事環境は吉田さんにマッチしているんですね。次にサービスについてお伺いさせてください。AIが活用できるサービスは世の中に色々ありますが、その中でAIチャットボットを開発する面白さって何でしょうか?

 正直にいうと、最初は機械学習の応用先のひとつぐらいに思っていました。しかし、実際にサービスが使われている場面をみることで、心境が変わりましたね。AIチャットボットは回答の精度があがれば業務改善につながるのですが、会話カードの作り方ひとつで使い勝手がかわったり、強いエンジンを入れるだけで飛躍的に運用コストが下がったり。ログをみれば、自分の技術がどれだけ人の役に立っているかがわかるんです。先ほど申し上げた顧客課題のお話になるのですが、自分の技術が役立っていることを感じられるのは、非常に嬉しいです。

 また私は、AIチャットボットは一番生活にとけこんだ人工知能なのではないかと考えています。画像認識、音声認識、画像生成、自動運転など、いまAIが使われているシーンは数多くあります。その中で隣にいる人にスマホひとつで説明できて、手軽に試してもらえるものってそうそうあるものじゃない。それが嬉しいんです。

 

ー 確かに同窓会とかで、「今なにしているの?」ってよく聞かれますよね。そのとき、共感を得られるのって、嬉しいです。初めて吉田さんを身近に感じました(笑)

なんか、ひどいです(笑)

実際に、私もひさしぶりに会った友人に「いま何してるの?」って質問をされて、その場でスマホを見せて説明しました。「それ使ったことあるよ」「面白いな」って反応をもらえたのは新鮮でしたね。カラクリのミッションでもある『今までにないカラクリで世の中を豊かに』は、生活に密着していればいるほど、成功と言えます。老若男女問わずに、使える技術を作っている実感が得られるのは、チャットボットサービスならではのやり甲斐だと気づかされました。

 

ディープラーニングを通して、これからの“カラクリ”が仕掛けること

ー AIは現在3回目のブームで、また廃れる時代がくるという方もいらっしゃいますが、吉田さんはどう思いますか?

 私は、当分廃れるとは思っていません。2010年前後から始まった3回目のAIブームの火付け役は、ディープラーニングです。この大きな発見で、以前と比べて研究者たちがAIに大胆になってきています。単純に各分野で認識精度や予測精度が上がったというだけではなく、応用できる範囲が質的に増えてきているようにも感じます。

 特定のタスクに限れば、人間並みのAIも生まれてきています。以前までは「AIには任せられない」と諦めていた部分が払拭できるようになったわけです。そうすると、あらゆる「AI×〇〇」が実現し、その数は無数にあって、まだ機械学習の“キ”の字もしらない分野へ浸透できる可能性があります。この浸透していく余地がある間は、私は廃れるというより、これからもブームを繰り返しながらAIは進化すると考えています。

 

ー なるほど!あの「未来のネコ型ロボット」ができあがるのも、もうすぐでしょうか?

 あ、それはまだまだ難しいです(笑)。ネコ型ロボットを実現するには、まだ3〜5回くらいはAIブームが足りないです。生きている間に見られたら、ラッキーぐらいに思ったほうがいいです。

 

ー しょぼん(´・ω・`)。。夢のある話が聞きたいです。

 では、カラクリの未来についてお話しましょう。カラクリは現在、カスタマーサポ―ト領域においてテクノロジー提供をしていますが、R&Dチームとしては今後「AutoCS」を実現したいと考えています。

 最近流行り出しているのが、 AutoML と呼ばれるコンセプトです。Google や Microsoft がほとんど全自動で AI を作ってくれるサービスを出しています。これを利用すると、学習してほしいデータをアップロードするだけで、数十分でAIが出来上がります。この AutoML のコンセプトはとても大胆ですが、チャットボットの世界で同じことをできないか考えています。現状、会話カードのセッティングなど「人が行なっている工程」を「完全自動化」することができるかもしれません。一足飛びには難しいと思いますが、最終的には問い合わせログを流し込むだけで「会話カードの設定が済んだチャットボット」が生成されるようにしていきたいですね。

 

ー それは、コンタクトセンターの方々に喜んでいただけそうですね!R&Dチームは、日々先端技術の研究を進めており、吉田さんは量子コンピューティングの世界大会でも優勝していますが、その技術なども今後活用されていくのでしょうか?

 はい、量子コンピューティングふくめ先端技術の研究はカラクリR&Dチームでは積極的に行なっています。基礎技術をあげるために、学会や競技プログラミングへ参加することは大歓迎です。

 これまでの経験からアカデミックな活動が、実ビジネスに応用できると実感しているからです。正直申し上げると、私は量子コンピューティングの世界大会に出場するまで、本技術については少しかじった程度の知識しかありませんでした。大会への出場がきっかけで本格的に勉強をしはじめたところ、量子コンピューティングの伸びしろに惹かれて、いまも研究を続けています。

 カラクリの実業務で量子コンピューティングをつかって最適化するプロジェクトを走らせたこともあるのですが、そのときは量子アニーリングマシンの知見が役に立ちました。

このように伸びしろのある技術を自分で研究して、ビジネスに活かしていくのは、いまのカラクリだからこそできることです。若手エンジニアの方々にも積極的に挑戦していってもらいたいですね。

 

ー ありがとうございました!最後に、吉田さんにとってカラクリとは?

 「新しい自分を発見できる場所」かな。お客様の声をちゃんと聞いてサービスを改善していくので、自分ひとりだけでは気づけなかった視点や課題をたくさん受け止められ、成長できる場所だと実感しています。

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